床の間と行燈 紡|紀州のセミコートハウス その11 | 築紡|根來宏典

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2021年3月8日(月)

床の間と行燈 紡|紀州のセミコートハウス その11

床の間の壁仕上げは「左官」。近くには紀ノ川が流れ、その上流、奈良との県境にある橋本市の菖蒲谷で採れた土。顔料を入れていない自然の土の色。土にスサ(ここでは白楮)と少量の石灰を混ぜた「大津壁」とうい技法。鏝で何度も抑えた緻密な肌の土壁。高度な技術が必要で、施工できる職人は限られている貴重な仕上げ。あまりに美しい土なので磨き込み過ぎず、その風合いを残した表情で止めました。肌理が細かく、しっとりとした色合い。地元の左官職人・原慶介さんの手によるもの。

 

地板は「漆黒のカシュー」。ナッツのカシュー(熱帯性漆科)の殻から抽出される油。会津塗、山中・輪島塗とともに日本三大漆器と称される紀州塗。黒江地区を中心に生産されており、そこの職人さんに塗ってもらいました。押入れの扉には、春慶の漆和紙。手漉きの楮紙に漆を塗ったもので、漆独特の透明感があります。長野県は木曽奈良井よりお取り寄せ。黒江の街並みのお話は、コチラ≫

 

障子を閉めて、明かりを灯した様子。障子を濾した光は、行燈のようで美しい。小さな間ではありますが、時間の移ろいとともに様々な表情で楽しませてくれます。