素/力強さ | 築紡|根來宏典

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2024年5月7日(火)

素/力強さ

京都・三条小橋のたもとに建つ『TIME’S Ⅰ&Ⅱ』。設計者は安藤忠雄氏。Ⅰは1984年、Ⅱは1991年に竣工。私的にはANDOの中で一番好きな建築。役所との折衝を重ねて実現した川との親水性が魅力。抽象化された幾何学ボリュームの隙間を練り歩く空間構成。迷路のような複雑さの視線の先、さらには上空から差し込む光、そこに生まれる陰とのコントラストが印象的。若かりし頃、世界の集落を旅した安藤氏の心象風景がここに込められているように感じます。

 

そんなTIME’Sですが、ここ数年、門は閉ざされ、多くの人から行く末を心配されていました。高瀬川沿いを歩いていたら、人影が、、、思わず二度見してしまいました。KYOTOGRAPHIEというイベントの一環だそう。ANDOといえば打放しコンクリートの仕上げですが、ここでは安価なコンクリートブロック。インフィルとしての店舗は退き、スケルトンとなった素の空間。人によってつくられた手の痕跡が露になり、専門誌にも公表されていない地下空間も拝見できる幸運。力強く存在する建築のリアリティに興奮冷めやらぬ。私は”素”という漢字一字が好き。素材、素顔。素数、、、日本語って素敵です。【期間は5/12まで】