中庭の空間性 | 築紡|根來宏典

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2024年5月9日(木)

中庭の空間性

京都東山にある『無鄰菴』には、年に何度か足を運んでいます。この日はあいにくの雨模様。それがまたいい。南禅寺界隈には、明治から昭和にかけ、政財界の大物たちがつくりあげた別荘が15軒たたずんでいます。このうち見ることができるのは、ここ無鄰菴だけ。元総理大臣・山縣有朋の別荘なのですが、市に寄贈され、公開されています。東山を借景とし、琵琶湖疎水の水を庭に引き込んでいます。庭は七代目・小川治兵衛(1860-1933)が手掛けた初期の傑作。

 

学生と一緒に来た時には、この中庭への光の差し込み方を見るようにと話しています。八畳の広さですが、庇が出ており、開口としては二畳ほど。図面にすると暗いだろうと思ってしまいますが、十分な明るさ。この絞りようが中庭の空間性を高めているようにも思います。軒の深さ、床や地面からの高さといったスケール感も大切。軒下には植物が育たないことも分かります。苔と土との境目のエイジング具合に侘びさびを感じます。