半屋外にもなる小間 紡|紀州のセミコートハウス その10 | 築紡|根來宏典

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2021年3月3日(水)

半屋外にもなる小間 紡|紀州のセミコートハウス その10

小間の東南角は、3枚引き込める全開口の木製建具。開け放てば半屋外のようになり、お庭との一体感が高まります。アルミサッシとは異なり、大工さん、板金職人、建具職人、塗装職人、ガラス屋さん、金物屋さん、素材納入者方々の合作。材種はピーラー。古木の良材(年輪幅の狭い大径木)をピーラーと呼びます。日本ではベイマツと呼んでいますが、日本のマツと同属ではなく、トガザワラに属します。葉がトガ(栂)、材がサワラに似ているからトガザワラ。紀伊半島(和歌山、三重、奈良)及び高知の限られた地域に自生しているのですが、蓄積量は少ない。ゆえにピーラーは重宝し、目の通った柾目は建具材に適しています。

 

それにしても見事な材を入れてくれました。見積時に「ずいぶん立派なのが入ってますね」と声に出してしまったのですが、それ以上、口を出さなかったのは正解でした。木製建具は、耐久性や反りのことを考えると、良質な素材を手に入れたい部位。

 

障子を閉めた様子。小間の中央には、琉球畳を4枚敷き込み、周囲にナグリのオーク縁甲板を回しております。縁甲板に腰掛けてお月さんを愛でる、畳の上で胡坐をかいて日本酒を頂く時間は至福です。

 

垂木と垂木の間の野地板には、仕上げ材として「染極細葭茶糸編」を張っています。文字通り、染めた極細の葭を茶色い糸で編んだもの。影になる部位ではありますが、紀州材の垂木をより惹き立たせるのが目的で、ひっそりと佇ませています。でもよく見てみると「こだわった素材を忍ばせているな」と。和室だけでなく、LDK、玄関、廊下、軒天などにも大胆に張っています。手の込んだ仕事ですので、大工さん泣かせではありますが、、、その出来栄えに感動。いわゆる数寄屋素材なのですが、和風を目指しているわけではありません。日本が育んできたモノづくりの文化を継承しつつ、現代的でモダンな様相に仕立てました。