根來宏典建築研究所

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2021年2月8日(月)

アプローチ 紡|紀州のセミコートハウス その3

紀州ヒノキ(無節)を張った深い庇がお出迎え。玄関ドアは造作引戸、その脇には腰掛けを設けています。北側隣地との境には扉を設け、勝手口やゴミ置場へと繋がっています。西側道路面の回り込んだ板塀は引戸になっており、その先には露地。

 

階段に据えているのは「芦野石」。栃木県の那須地方で採れる安山岩質溶結凝灰岩。準硬質の優しい表情が特徴的。蹴上は200mm。石の厚みは150mm。200mmとしても良いのですが、原石の切り出しサイズは300×300×900mmのため、半分に割ると歩留まりが良い。また200mmだと重くて重機がないと運べません。150mmだと人の手で運ぶことが可能。意匠的に50mm浮いた軽快感が生まれるとともに、蹴込(つま先が入る)が出来て機能的でもあります。そんな複合的な理由から150mmとしました。小口は石の風合いを活かした「割り肌」。踏面は「チェーン挽き」。挽き目をそのまま活かした仕上げ。使った道具や作り手の痕跡を感じる味わい深さを残しました。

 

露地を見返した様子。眼前に和泉山脈の山々を臨む景色。外部から直接、広間に入ることのできるアプローチで、来訪者をもてなす仕掛け。躙り口ではなく貴賓口。ポーチから伸びやかに回り込む庇は、雨の日に濡れずに出入りできるという機能的なこともあるのですが、空間的な奥行きを感じます。

 

壁はネゴロジムショの定番・横井さんのタイル。今回は白い二丁掛タイルを縦張り、芋目地。瀬戸や多治見の上質な白い粘土を使い、1300℃で焼かれた炻器質タイル。手づくりなので一枚一枚に個性があります。タイルを張る技術も要するため、名コンビの和田さん一門でないと張れない代物。目地は詰めるというよりも「掻き落とし」。タイルというよりも「左官」のような仕上げ。良い素材であると同時に、良い目地職人さんがいないと、その良さが惹き出せない素材です。

 

飛び石は芦野石、その周りの砂利は京都産の新南部。水打ちすると、美しい錆色になります。貴賓口の足元の石だけ、黄色い斑が混じった石を据えています。同じく芦野石なのですが「寅目」といって、めったに手に入れることができない珍重品。早い段階から懇意にしている石屋さんにお願いしていたのですが、手に入らないと言われ「そこを何とか」とお願いし続け、6枚分だけ見つけ出してくれました。こちらは寅目を惹き立たせるようフラットな仕上げの「コーピン挽き」に。ポイントとなる箇所に、大切に使わせていただきました。この寅目の前後の仕上げは、左官職人の手による豆砂利(新南部)洗い出し。

 

今回は芦野石を多用させてもらいました。ポーチ、玄関、洗面脱衣室、浴室、BBQテラス、飛石など。御影石に比べて柔らかく、大谷石に比べて硬いのが特徴。場所場所に合わせて、石の厚み、仕上げ方、張り方などを変え、この石ならではの魅力を惹き出すよう心掛けました。芦野石の採石場のお話は、コチラ≫