玄関へと至る小路@つくばの曲り家 その3 | 築紡|根來宏典

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2020年3月4日(水)

玄関へと至る小路@つくばの曲り家 その3

道路に面した北側の外観。玄関の位置は、道路からの引きを取り、奥まったところに配置。豆砂利洗い出しのアプローチを屈曲しながら、奥へ奥へと導かれます。連子格子の付いた窓の下場は、地面から1.9m(室内床から1.4m)の高さにあるのですが、プライバシーを守るとともに美観を考慮したもの。

 

シンボルとなる植木は二本。一本は、奥さん好みのモミジの株立を勝手口の前に。もう一本の植木は、ご主人好みのアオハダの株立を玄関の前に。モミジの紅葉、アオハダの赤い実は、その季節になると黒い焼杉を背景に映えます。この二本の間を縫って玄関へと至る小路を演出。

 

木肌色の引戸が印象的な外観。キッチン脇に設けた勝手口です。駐車場に車を停めて、重い買い物を外から放りこめるように。また宅急便で届く重たい荷物は、こちらからでも受け取れるようにと奥さまの要望。つまり全体の配置計画として、勝手口が道路に面した目立つ位置にある訳です。勝手口は「開き戸」ではなく、使い勝手の良い「引戸」。ご近所さんからは「建具屋さんの手づくりなのが素敵!」と好評のようです。勝手口までの経路には、大谷石の飛石を敷いて魅力を惹き立てます。

 

日本の伝統色に『秘色(ひそく)』という色があります。焼物の青磁の肌の色を「青磁色(せいじいろ)」と言いますが、その神秘的な美しさから「秘色」と呼ばれるようになったそうです。また中国・唐の時代、王家以外は磁器青磁の使用を禁じられたことから秘色青磁と呼ばれるようになったとも言われます。日本では、平安時代の文献に「秘色」の名が散見されるのだとか。その青磁色の寂びた(さびて灰みを含んだ)色が「錆青磁(さびせいじ)」。明治前期の日本の流行色でもあります。外壁の焼杉に対し、寂びていながらエッジを惹き立てることを目的に、唐草や水切りの色に「錆青磁」を忍ばせてみました。平屋の伸びやかな水平ラインがより惹き立っていることと思います。