東山の奥座敷、御寺泉涌寺山内のさらに一番奥にある別院『雲龍院』。「蓮華の間」の4枚並びの雪見障子からは、椿、灯篭、紅葉、松を眺めることのできる設えで「色紙の景色」と呼ばれています。建物の配置は日本建築らしく雁行させ、縁側が廻っています。縁先にはサツキの刈込。その目的は分からないのですが、建築と外構とがボーダーレスに繋がる様相が美しい。「霊明殿」の前には、徳川慶喜寄進の石灯篭。その足元には、皇室の紋章である菊花紋章の砂紋。連なる縁側の一部に流し。機能的であるとともに美しい。参考にしたい設え。本堂「龍華殿」の屋根はサワラ材を竹の釘で打った杮葺き。軒は深く、その姿は雄大。露地も美しい。菊花紋章の水琴窟も配置され、目と耳、そして心を癒してくれます。「月窓の間」は数寄屋普請。床脇の三日月の開口から光が差し込み、床飾りを情緒的に照らします。床柱は奇木を用い、その納まりは秀逸。所々に行き止まりの印があるのですが、現代アートのようで美しい。「悟りの間」の床の間の両脇には書院があり、四角く切り取られた方は「迷いの窓」、丸く切り取られた方は「悟りの窓」と呼ばれています。