『紀州の家』本物の左官職人さんと出会いました。和歌山での仕事は初めてなので、面識ある地元の左官職人はいません。本物という言い方はオカシイですかね、、、鏝捌きが上手いというのは言うまでもないのですが、ここでいう本物とは、自分で土を探して、採ってくる職人のことを言いたいと思います。
メーカー企業が開発した既調合の左官建材が広がる前は、自分で土を探し、採りに行っていた左官の世界。その土をどう上手く塗るかが左官の技術だった訳ですが、メーカー品の方が手っ取り早く、高度な技術は必要ありませんし、不具合があった場合はメーカー責任にもできる訳ですね。それは合理的であり、安定供給できる反面、歴史的に培ってきた技術の放棄であり、過当競争に巻き込まれる事態を招いた理由だとも言えます。それは左官だけでなく、他の素材でも同様のことが言えると思います。
左官は私も好きなので、色や塗り方まで私が指示しようと思っていたのですが、ここで出会った職人さんと話していると、言った以上の反応が返ってくる。私なんぞが知ったかぶりをして指示するより、職人さんの好きに塗ってもらった方が良いように感じたので「塗り見本、持ってきてもらえます?」と言ったら、すぐ持ってきてくれました。本物の左官職人は自分だけのオリジナルのレシピを持っており、その記録や研鑽のために作成した塗り見本を大切に保管しているのです。
下の3枚、美しいと思いませんか?顔料等は入れていない自然の土の色。大津仕上げという技法。私と建主奥さんが迷わず選んだのが、左のもの。ただの色違いのように見えますが、肌理が細かく、しっとりとした色合いなのです。そこでウンチクを聞いてみることに。右2枚は京都で採れる土で、買ってきたもの。選んだものは、地元・橋本市の菖蒲谷で採れた土。こちらの左官職人さんが見つけたのだそうで、具体的な場所は秘密。話を聞くと、益々愛着が湧きますね。
今回は、床の間に塗ってもらうようにします。もう少し磨いてもらおうと思っています。その塩梅加減が難しいので、塗る時は私も立ち会うことにしました。当日の職人さんとの会話が楽しみでなりません。ちなみに、この塗り見本が欲しいと申し出たら、凄いイヤな顔されました(笑)手放したくないようです。見本という言い方は、オカシイかもしれませんね。それほど大切なものなのです。
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