先日、家づくり学校1年生の第6回「歴史から考える」の授業がありました。
講師は、家づくりの会の山本成一郎先生と石黒隆康先生。
一年生は座学としているのですが、古建築に関しては教室で図説するよりも、
実物を見ながら解説した方が身になるだろうとのことで、大型バスをチャーターし、
現地に足を運んできました。向かったのは、埼玉、栃木、群馬方面。
はじめに訪ねたのは、埼玉県熊谷市にある『妻沼聖天山歓喜院』。
高野山真言宗の仏教寺院です。
その御本殿「聖天堂」は平成24年に埼玉県唯一の国宝建造物に指定されています。
なんといっても印象的なのは、彫刻、漆塗、彩色、金具からなる鮮やかな装飾。
日光東照宮を彷彿させるものですが、それもそのはず。東照宮の造営から100年後、その技術を受け継いだ職人さんたちが完成させたもの。
江戸時代中頃のこと、1735年-1760年の25年を費やして建立。
奥殿、相の間、拝殿が一体となっ廟型式権現造りであり、
日光東照宮などに見られる複数棟を一体とした建築様式なのだそうです。
技術や様式の継承という点で、興味深く拝見させていただきました。
次に訪れたのは栃木県足利市にある『鑁阿寺』。その本堂は1299年建立、1407年-1432年大改造されています。鎌倉時代に建てられた関東以東で唯一の国宝建造物(平成25年指定)。基本的には禅宗様なのですが、和様の要素も入っています。
見学に来る道中、バス車内では山本先生よる講義がありました。山本先生によると、日本建築の変遷には3つの点が大きく関わっていると言います。外来様式の導入による構造の変化、技術の発展による変化、都市の成立に伴う法規制による変化。
禅宗様、和様といったことは、一つ目の外来様式の導入による構造の変化であり、
そういった視点で古建築を読み解けるようになれば、その建築の時代性や変化の要因、ゆえにその建築的価値を理解することができるようなるかと思います。
個人的に興味深かったのは、こちらの歓喜院の中門。
江戸時代初期の災火において唯一焼けずに残った聖天山最古の建造物。
平成2年の解体修理の際に屋根を銅板葺きにしたそうなのですが、
その板金の技術が素晴らしい!
こちらは山本先生がいう二つ目の技術の発展のよる変化ですね。
当初は茅葺であり、ある意味において自由だった造形。
それが耐久性を求めつつも、その意匠を継承するための板金職人の技。