採掘場は誰もが感動するところ。
設計者としては、その先の使い方も学ばねば!
深岩石が使われた建築の実例を見学。栃木市にある『横山郷土館』です。
栃木市でも大谷石が使われた建物を多く見かけるのですが、
深岩石は高価なために一般住宅で使われることは少なく、
お屋敷などで使われていたそうです。
こちらの建物は、中央に切妻造りの木造店舗、その両翼に深岩石の石蔵の構え。
右半分は麻問屋、左半分は銀行を営んでいた明治時代の豪商の建物です。
文化庁の登録有形文化財にもなっています。
石蔵が保存状態良く残っています。
作りがしっかりしていることもあるのですが、
深岩石は圧縮強度が強いので耐震性に優れ、
かつ吸水率が低いので壁が汚れにくいのも要因かと思われます。
また凝灰岩であるため、調湿機能に優れており、蔵の内装にも適しています。
ちなみに窓枠に使われているのは、同じく栃木県で採取される『芦野石』。
芦野石は、圧縮強度がさらに強く、
地震の影響が受けやすい開口部廻りに使うことは、理に適ったこと。
また浴室の床に使えるほど水にも強いので、水切りにも適しています。
深岩石の勉強に来たのですが、他にも見事な石が使われています。
こちらは『白河石』の黒目。
白河石(福島県)と芦野石(栃木県)は同じなのですが、
採れたところで名前が変わります。
ともに灰色の石なのですが、特に黒目の白河石は、希少価値が高く珍重。
大谷石と深岩石は凝灰岩、芦野石と白河石は安山岩。
どちらも御影石などの花崗岩に比べ、柔らかく優しい表情が特徴。
柔らかい分、加工がしやすいので、彫刻にも向いています。
ちなみに芦野石には、入手困難な寅目というのもあります。その仕様事例はコチラ≫
裏に回って、お庭と座敷の様子。素晴らしい建築です。
石の勉強に来たのですが、見所が盛りだくさん、、、
天井には屋久杉なんかも使われておりました。
足元に目を向けると、基礎にも深岩石。
水の吸い上げが少ない特徴を活かしたものであり、
その美しい状態が残っていることからも、
品質の良さが歴史的にも証明されているかと思います。
石の品質を表す指標として、吸水率、圧縮強度、見かけ比重があります。
石にはそれぞれの特徴があり、それを知ると適材適所の使い方が見えてきます。
こちらの建物は、その経年変化の様相を知ることができる貴重な文化財なのです。