大谷石の産地は、宇都宮市ですね。
市内のあちこちには、大谷石の蔵が点在しています。
中でも石蔵等が建ち並び、それらの連続した街並みを形成している地域があります。
江戸時代初期、日光街道の宿場町として栄えた徳次郎宿の一角に、
その集落が残っています。
宇都宮市で産出される凝灰岩を総じて大谷石と言いますが、
このエリアで採れる石は『徳次郎石(とくじらいし)』と呼ばれ、
今では採れなくなってしまいましたが、大谷石の中でも特に良質なものでした。
徳次郎石:大谷石=6:4くらいの割合で使われているのですが、
徳次郎石は汚れが目立ちませんし、大谷石は詫びた感じ。
どちらが良いというわけではなく、
経年変化の違いをハッキリと読み取ることができます。
蔵や塀が大谷石というのは珍しいことではありませんが、
母屋、離れ、納屋なども大谷石で出来ていたり、
部位としては、石瓦、小庇、窓飾り、家紋なども大谷石で出来ています。
ちなみに石瓦は、徳次郎石でないと出来ない(ダメになる)そうです。
集落にある総建物数99棟のうち、62棟の大谷石建造物が残っています。
作られた年代によって大まかに分類できるのですが、
工法としては、積石や張石があったり、
仕上げとしては、ツル目、チェーン目、ビシャン、研磨、コボリ、割肌があったり、
石の積み方や目地処理の違いもあったりと、それぞれが個性的。
地域で採れる素材、その技術の発展、その変化の様相、
個々が多様な個性が放ちつつ、その集積としての街並み。
大谷石の多様な世界観を知ることができる集落なのです。
徳次郎石で出来た蔵。味噌が少なく、肌理が細かく、変色が少ない。
こちらの集落の中で、もっとも凛としたオーラを感じる佇まい。
目地は、漆喰を蒲鉾状に盛ったナマコ壁。
所有者の方の好意に甘え、その中まで見せてもらいました。
私自身、こちらの集落を訪れたのは5度目。何度来ても飽きません。
特に今回は、雨の天候。晴れ間の時とは、その印象は異なります。
大理石やトラバーチンなどは、晴れ間の方が映えますが、
大谷石は雨に濡れた時の方が美しく、とても日本的な素材かと思うのです。
雨の似合う建築を目指したいと思っています。そんなお話は、コチラ≫