大谷石の多様な世界観 | 築紡|根來宏典

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2018年8月3日(金)

大谷石の多様な世界観

大谷石の産地は、宇都宮市ですね。

 

市内のあちこちには、大谷石の蔵が点在しています。

中でも石蔵等が建ち並び、それらの連続した街並みを形成している地域があります。

江戸時代初期、日光街道の宿場町として栄えた徳次郎宿の一角に、

その集落が残っています。

 

宇都宮市で産出される凝灰岩を総じて大谷石と言いますが、

このエリアで採れる石は『徳次郎石(とくじらいし)』と呼ばれ、

今では採れなくなってしまいましたが、大谷石の中でも特に良質なものでした。

 

 

徳次郎石:大谷石=6:4くらいの割合で使われているのですが、
徳次郎石は汚れが目立ちませんし、大谷石は詫びた感じ。
どちらが良いというわけではなく、

経年変化の違いをハッキリと読み取ることができます。

 

蔵や塀が大谷石というのは珍しいことではありませんが、

母屋、離れ、納屋なども大谷石で出来ていたり、

部位としては、石瓦、小庇、窓飾り、家紋なども大谷石で出来ています。

ちなみに石瓦は、徳次郎石でないと出来ない(ダメになる)そうです。

 

 

 

集落にある総建物数99棟のうち、62棟の大谷石建造物が残っています。
作られた年代によって大まかに分類できるのですが、

工法としては、積石や張石があったり、

仕上げとしては、ツル目、チェーン目、ビシャン、研磨、コボリ、割肌があったり、

石の積み方や目地処理の違いもあったりと、それぞれが個性的。

 

地域で採れる素材、その技術の発展、その変化の様相、

個々が多様な個性が放ちつつ、その集積としての街並み。

大谷石の多様な世界観を知ることができる集落なのです。

 

 

 

徳次郎石で出来た蔵。味噌が少なく、肌理が細かく、変色が少ない。

こちらの集落の中で、もっとも凛としたオーラを感じる佇まい。

目地は、漆喰を蒲鉾状に盛ったナマコ壁。

所有者の方の好意に甘え、その中まで見せてもらいました。

 

私自身、こちらの集落を訪れたのは5度目。何度来ても飽きません。

特に今回は、雨の天候。晴れ間の時とは、その印象は異なります。

大理石やトラバーチンなどは、晴れ間の方が映えますが、

大谷石は雨に濡れた時の方が美しく、とても日本的な素材かと思うのです。

 

雨の似合う建築を目指したいと思っています。そんなお話は、コチラ≫