渋谷区松濤にある『Gallery TOM』の前を通ったら、開館していたので入ってきました。若江漢字さんによる「絵画-克服される現在Ⅱ」展が開催中でした。こちらは、視覚障害者のための手で見るギャラリーとして、1984年に建てられた私立の小さな美術館。設計は内藤廣さん(1950-)。内藤さんの処女作は自邸で、こちらは同年に完成した2作目の建築です。
マッシブなコンクリートの箱の中に、田の字を斜めに振ったプランニング。入口は狭く絞り、一歩中に入ると、広がりを感じつつ2階に上がっていくアプローチ。ギャラリーは吹き抜けになっており、明るい日差しが射しこむ空間です。特徴的なのは「どこが視覚障害者のため?」と思うところ。たまたま視覚弱者の方が訪れていたのですが「いかにも視覚障害者のためという施設にするのではなく、特別視のない環境で鑑賞するための空間」と解説を受けていました。しいて言えば「手すり」くらい。この手すりが握りやすい。多くの方が触れてきた温かみを感じました。