前々から使ってみたいと思っていた『木毛セメント板』。国産ヒノキの間伐材を100%使用。接着剤は使用せず、リボン状に細く削り出した木材と水とセメントのみを合わせて圧縮成型したもの。耐火性、耐朽性、耐蟻性、断熱性、調湿性、脱臭性、音響性能といった多機能に優れているのが魅力です。
歴史を遡れば、関東大震災後の復興材料(塗り壁の下地材用)としてドイツから輸入されたもの。現在は耐火野地板と呼ばれ、屋根下地として使われる建材。その荒々しい表情が私好みなのですが、好みは分かれるところ。こちらの建主さんは現場監督なので、もちろん木毛セメント板のことは知っていて、提案したところ快諾してくれました。ここでは大胆に天井の広い面に貼っています。その周囲は折り上げ天井とし、間接照明で照らします。どんな素材にも、その魅力や生産者の思いがあり、それを惹き立たせるのも設計者の役目と考え、チャレンジしています。