創造系不動産の高橋寿太郎さんらの新書『建築学科のための不動産学基礎』を拝読。建築教育の現場では、体系、思想、技術、発想などに重きが置かれ、お金、資産、取引のことに触れることは殆どありません。それは創造的社会の理想論においては意に反することかもしれませんし、日本人が苦手とするところでもありますね。それは多くの学問分野においても同様のことが言えるのではないでしょうか。ただ社会に出て、また自分がクライアントと関わりを持つ立場になると、立ち向かわねばならない現実が待っています。その壁をクリエイティブに乗り越える柔軟性を、学生の時から意識しておくことは意義あること。すでに建築と不動産をつなぐプレイヤーは出てきていますが、こういった視点を持った学生が社会に出て、5年、10年もすると、それは当たり前の価値観になろうかと思います。そういったギャップに気付いている実務者の方にもお薦め。建築家を目指すことへの不安、お金儲けにならないから、不動産への道を勧めているのではありません。不動産的思考を設計に取り込むことができれば、それは武器になります。建築家の未来に光をあてる。そんな一冊だと思います。