先日、建築会館ホールで開催された新しい時代を拓く秋のセミナー「木と太陽の設計術」が開催されました。町の工務店ネット、家づくりの会、LEXS研究会、田園住居推進協議会の共催です。A:中規模木造がおもしろい、B:人と自然をつなぐ建築の未来形、C:泉幸甫と田瀬理夫の緑の計画学の三本立て。延べ370名の参加申込があったそうです。私自身は、その内のAとBに参加してきました。
地球環境問題や国の施策において、建築の木造化が推進されて随分経ちますが、越えなければならない課題が未だ未だ多いように感じます。中規模木造建築について講義された泉さんは「大規模木造はゼネコン、中規模木造は工務店が手掛け、二極化していくことになるでしょう」と言います。私はいつも野丁場(公共・大型物件の仕事)と町場(住宅の仕事)との対比関係で頭を整理するのですが、建物を作るには多くの人が関わっています。組織論でいうと大規模はツリー構造、中規模はネットワーク構造が有効かと思われます。中規模木造には、林業家、製材所、プレカット会社らとの協働が重要であり、良質な工務店は既にその関係性を築いておりますね。とはいえ工務店は、設計部に中規模木造建築を設計できる人を抱えていないのが現実なのだと思います。設計力を求めない建物で構わなければ悩まなくてもよいのですが、中規模木造建築を作る目的は、利用者の快適性、街に開く、地域活性化、等々、社会性を帯びて行くことにあろうかと思います。そこを切り拓いていきたいという人たちが集まったんだと思います。
そこで有能な設計者の存在が不可欠になってくるのですが、住宅設計者は中規模木造に向いていると思います。規模ではなく、用途のこと。低層集合住宅、旅館・宿泊施設、福祉施設、保育・幼稚園などにおいて快適性を高めるなら、住宅設計レベルのきめ細かさを必要とするからです。単に木を使えばよいとうのではなく「木の使い方」も重要。現在、中規模木造を高いレベルで創出できている設計者は、木材を取り扱う関係者との協働にも長けているように思います。そして、暮らしにまるわる機能や動線計画といった「気の使い方」も重要ですね。経済、性能、工期、制度をあまりにも優先する事業であれば、出番はないかもしれませんが、、、さてさて、今後どうなっていくものやら。。。自分には何が出来るかを考えさせられる時間となりました。