東京ステーションギャラリーで『アルヴァ・アアルト もうひとつの自然』展が開催。
北欧フィンランドを代表する建築家アアルト(1898-1976)。日本における20年ぶりのアアルトの個展。ステーションギャラリーなので、一般の人を鑑賞対象としたものですが、専門の人でも満足する内容になっていると思います。私は鑑賞に2時間掛かりました。会期は2月16日~4月14日です。詳しくは、コチラ≫
特に「セイナヨキのタウンホールの建設(1961-62)」の10分ほどの映像に見入ってしまいました。型枠、鉄筋、コンクリート打設など当時の生々しい建設現場の様子が映し出されております。あの濃紺の蒲鉾型タイルがプレキャストで作られていく様は、とても興味深かったです。
展示物の写真撮影はもちろん禁止。こちらの写真は四半世紀前に私が現地で撮影した『セイナヨキのシティセンター』。
フィンランド南端に首都ヘルシンキやトゥルクといった大きな都市があり、その北270kmの地にある大きな都市がユヴァスキュラ。
それより更に北にある人口6万人の都市がセイナヨキ。そこはアアルトファンの聖域と呼ばれる場所。
シティセンターはチャーチ、教区センター、タウンホール(濃紺蒲鉾型タイルの建物)、ライブラリー、シアター、合同庁舎で構成。
その全てがアアルトの設計なのです。そのチャーチの鐘塔から見下ろした様子。
一人の建築家がまとまった建築群を提案していることはありますが、実際に実現されていることは稀ですね。
アアルトも多くのシティセンターを提案していますが、唯一完全な形で実現したのがセイナヨキ。
アアルトの夢と思想が詰まったプロジェクト。その実現には紆余曲折があり、その様相の変化(苦悩と葛藤)が詰まっている場所。
マニアックなレベルでアアルトに興味ある方にお薦めの一冊があります。コチラ≫
GA16(アルヴァ・アアルト/イマトラの教会、セイナヨキ・シティ・センター)に武藤章氏の興味深い論考が載っています。
ヴォクセンニスカとセイナヨキの二つの教会の比較、さらにはシレンやブリックマンの教会を引用しつつ、
アアルト設計のセイナッツァロ村役場、ヴィープリ図書館、ルイ・カレ邸、アトリエ・アアルトを引用しつつ、
コルビュジェとの比較や、ピアジェ(心理学者)の人間の空間知覚の発達過程との類似性を、短いながらも見事に示しています。
ヴォクセンニスカ教会についての紹介は、コチラでも≫