午後から訪れたのは『大山材木店』の製材所。丸太を角材や板に加工する所ですね。
大規模な製材所では最新設備が導入され、オートメーション化が進んでいますが、
こちらは比較的に小さな規模で、町場の製材所といった感じです。
丸太の製材には、3人がかり。
大規模な所、小規模な所、それぞれにメリット、デメリットがあります。
そういったことを、大山さんの所で学べたように思います。
今回は、特別に樹齢280年の丸太を目の前で挽いてくれることに。
丸太の断面を見て、まず木取りを決めるのですが、
教科書的にいうと、いかに合理的に丸太を分割するかということになります。
しかし実際に挽いてみると、木の持つ一本一本の個性に気づきます。
見事な柾目が出てきました。大山さん親子は、これは建具に使おうと話し合います。
建具は、反りのことや、人目に触れる部位ですので、
こういう真っ直ぐで良質な柾目は希少価値が高いのです。
流れ作業になると、一つ一つの素材の特性を見極めることができなくなりますね。
目の前で繰り広げられる大山さん親子の生々しく、
人間的、職人的な仕事風景を目の当たりにする機会に恵まれました。
丸太の木取りはもちろんのこと、挽いてみないと分からない素材の特質を見極め、
その使い道を相談しながら木を使える製材所として貴重な存在かと思います。
500角の立派な角材が眠っておりました。
原木の大きさは1000Φ、樹齢500~600年ものだそうです。
こちらは大山さんお手製の乾燥室。
できるだけ天然乾燥させたく、乾燥室は補助的に使っているそうです。
天然で乾燥を十分に行うのは、現実的には厳しいものがあり、
こういった技術に目を向けているところにも共感した次第です。
続いて訪れたのは小田原の宮大工『芹澤棟梁』の作業場。
ちなみに芹澤さんは、この4月~9月にかけて森美術館で開催されていた「建築の日本展」において『丹下健三自邸』の1/3スケールの再現模型を製作されたお方です。
その展示会のお話は、コチラ≫
棟梁には、素材のこと、道具のこと、技術のこと等をお聞きします。
近年の一般住宅では、現場でカンナを使う大工さんの姿が見られなくなってきておりますね。既製品によるキット化住宅が主流ですので、、、
棟梁の手によると、指一本でもカンナは引けます。
その厚みは8ミクロンほど、サランラップよりも薄いのです。
我々が認識しているカンナは、台カンナ(先の写真)と呼ばれ、
室町時代中頃に中国より伝わったと考えられております。
それ以前に日本で使われていた木を削る道具は、こちらの槍カンナ。
棟梁曰く「台カンナが入って来て、槍カンナを使える大工がいなくなった」と。
槍カンナの技術を披露してくれました。
流れるような美しい動き、その雄姿は勇ましい。