銀座一丁目(新富町駅より徒歩2分のところ)にある『鈴木ビル』
昭和4年(1929)竣工、東京都選定歴史的建造物にもなっています。
現在はオフィス等が入るビルとなっていますが、
かつては甲子屋倶楽部と呼ばれ、公演や稽古事等に部屋を貸していた建物であり、
2階には芝居等の公演ができる広い舞台、3階は住居、
その他は予備室や貸室となっていたそうです。
外観は、装飾的なレリーフや窓のデザイン、
昭和初期に流行したスクラッチタイル(表面に引っ掻き溝を付けた無釉のタイル)、
緑青銅板が葺かれた4つの馬蹄型のドーマー窓が特徴的です。
一歩中に足を踏み入れると、昭和にタイムスリップしたような空間。
アーチの向こうは階段となっており、さらに奥にも空間が続いています。
共用部分に向いて開けられた開口部もそれぞれに個性的があり、
人の気配を感じたり、目を楽しませてくれます。
廊下や階段といった共用部分が、複雑な立体路地のようになっており、
人が行き交う多様なシチュエーションが想像できます。
青い絨毯が敷かれ、凛とした佇まい。
管理者や入居者のこの建物に対する愛着を感じます。
ドーマー窓に差し込む光が共用階段を照らします。
建物は5階建てなのですが、その上へと続く階段も魅惑的。
曲線が美しいアールデコの造形。
昭和モダンな名建築だと思います。
昨日、ジェイコブズのお話をしましたが、建物にも「DEATH AND LIFE」があり、
こちらの建物はモチロン「LIFE」ですね。
時を経て、なお輝きを増す生き生きとした空間がココにはありました。