ビル中の立体路地 | 築紡|根來宏典

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2018年5月18日(金)

ビル中の立体路地

銀座一丁目(新富町駅より徒歩2分のところ)にある『鈴木ビル』

 

昭和4年(1929)竣工、東京都選定歴史的建造物にもなっています。

現在はオフィス等が入るビルとなっていますが、

かつては甲子屋倶楽部と呼ばれ、公演や稽古事等に部屋を貸していた建物であり、

2階には芝居等の公演ができる広い舞台、3階は住居、

その他は予備室や貸室となっていたそうです。

 

外観は、装飾的なレリーフや窓のデザイン、

昭和初期に流行したスクラッチタイル(表面に引っ掻き溝を付けた無釉のタイル)、

緑青銅板が葺かれた4つの馬蹄型のドーマー窓が特徴的です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一歩中に足を踏み入れると、昭和にタイムスリップしたような空間。

アーチの向こうは階段となっており、さらに奥にも空間が続いています。

 

共用部分に向いて開けられた開口部もそれぞれに個性的があり、

人の気配を感じたり、目を楽しませてくれます。

 

 

 

 

 

 

 

廊下や階段といった共用部分が、複雑な立体路地のようになっており、

人が行き交う多様なシチュエーションが想像できます。

 

青い絨毯が敷かれ、凛とした佇まい。

管理者や入居者のこの建物に対する愛着を感じます。

 

 

 

 

 

 

 

ドーマー窓に差し込む光が共用階段を照らします。

建物は5階建てなのですが、その上へと続く階段も魅惑的。

曲線が美しいアールデコの造形。

 

昭和モダンな名建築だと思います。

 

昨日、ジェイコブズのお話をしましたが、建物にも「DEATH AND LIFE」があり、

こちらの建物はモチロン「LIFE」ですね。

時を経て、なお輝きを増す生き生きとした空間がココにはありました。