古建築 その1 大法寺三重塔 | 築紡|根來宏典

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2017年1月17日(火)

古建築 その1 大法寺三重塔


1月14日(土)、家づくり学校2年生の授業『古建築』で、寒波押し寄せる中、
雪降る長野県に行ってきました。引率講師は、山本誠一郎先生と石黒隆康先生です。

まず初めに向かったのは、国宝『大法寺三重塔』。
大法寺は天台宗のお寺で、開山は藤原鎌足の子・定恵(じょうえ)によるもの。
山腹に点在する伽藍で、三重塔は一番高い所に建っています。

塔の建立は、定恵の没後、正慶二年(1333)頃。
鎌倉時代からな南北朝鮮時代に移る過渡期になります。
組物内部に残っている墨書には「天王寺大工四郎某のほか、小番匠7人」の記載があり、
大阪の大工が建てたものと伝えられています。

正面は南向き、檜皮葺による宝形屋根、高さ18.3mの三重の塔。
屋根は2014年、58年ぶりに全面葺き替えされたそうです。

なんといってもプロポーションが美しい、というのが初めの感想。
1階から3階にいくに従って、塔の幅が小さくなっています。
これを「逓減率」といい、時代の古い塔は値が大きく、新しいほど小さいのだそうです。

三重の塔の組物は、通常「三手先」なのですが、初重が「二手先」なっている珍しい塔。
三手先の方が格式が上がるのですが、あえて二手先にすることで、
柱間を広くすることができ、全体のバランスの良さを実現しているそうです。

胡粉という白い下塗り材の後が残っていることから、
現在は色落ちしているものの、建立当時は朱塗り(部分的に緑)だったそうです。

柱と柱は、長押で結ばれています。
頭の高さにあるものを「内法長押」、腰のあたりにあるものを「腰長押」、
縁の上にあるものを「縁長押」と呼ぶそうです。

この長押工法が採用されるようになった後、建物の耐震性が高まり、
後世に残る現存率も高まりました。

裏山にも回って上ることができ、塔越しに見下ろす田塩平の景色も美しい。
2階、3階には勾欄(手摺)があり、
各階の扉が板戸で出来ている点は「和洋」様式の特徴だそうです。

屋根の反り具合も美しい。たいへん手間の掛かる仕事だったことと思います。
見る視点によって、各層の見え方の異なる反りを同時に見れることも美しいと感じました。
美しさのあまり、思わず振り返ることから「見返りの塔」としても親しまれています。

根來宏典