明治政府が召し上げた南禅寺の敷地を開発した後に、政府要人や実業家らによって15の別荘が建てられました。これまで見学できたのは無鄰菴のみ。こちらの山荘も門が長く閉ざされていたのですが、昨秋から庭園が、今年1月から建物も見学できるようになりました。庭園は庭師・小川治兵衛、建物は大工・島田藤吉が手掛けています。
北東に面した書院は足元が崖地になっており、宙に浮いている様相。そこから臨む東山を借景とした庭園風景は圧巻。対して南東に面した茶室群は地面との距離が近い。庇を深く下ろしているので、足元への視線が抜け、庭との一体感に心が落ち着きます。小間は、四畳向板・道安囲いの構成。客座と手前座の境に中柱を立て、襖で仕切ることができる構え。2階から臨む景色も圧巻で、建物と庭と東山とを一体に感じ取ることができます。見事な近代数寄屋。お庭は琵琶湖疎水を引き込んだ池泉回遊式となっており、様々な景色が目を楽しませてくれます。書院の下を潜る沢飛びに心が躍らされます。