東京都練馬区下石神井にある『ちひろ美術館・東京』に立ち寄ってきました。絵本作家・いわさきちひろ(1918-1974)の自宅兼アトリエ跡に建てられた美術館。2002年竣工で、設計者は内藤廣さん。平面計画は、三角形や四辺形を分散させた複雑な構成。以前の建物は増改築の繰り返しにより、迷路状に入り組んでいたそうです。建て替えに当っては、そういう記憶をも継承できるように考えたとのこと。もともとあった3本のケヤキをそのままの位置に残したり、以前からあった中庭とちひろの庭のふたつの庭を囲い込むようにも構成されています。住宅街に建つ建築ですので、小さなボリュームを分散させることで、スケール感を抑えることにも繋がっています。分散させた棟と棟の間には植栽を配置し、小道を散策するような設え。また高木を配置することにより、周辺住宅への視線を遮る配慮なども見られました。ちひろアトリエも復元され、その様相に心惹かれます。違和感なく街に溶け込んでおり、共感の持てる建築です。