鋳物の町工場 | 築紡|根來宏典

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2019年2月20日(水)

鋳物の町工場

一昨日、昨日と建具金物のお話をしましたが、それを作っている町工場のお話。

 

墨田区にある鋳物工場。創業は大正7年(1918)。自動化する鋳物企業が多い中、今も昔ながらの手作業で一つ一つ鋳物を作っています。昨日お話したベストをはじめ、主要メーカーの真鍮製建築金物を製造している町工場です。

 

砂型鋳造という技術で、高温で溶かした金属を砂型に流し込み、冷えて固まったものが鋳物。金属を溶かす作業を溶解、個体から液体に変わる温度を融点と言います。写真は融点1050度を眼前に溶解する様子。過酷な現場です。

 

 

 

 

こちらは、その原型。プラモデルのように部材が連なっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂型をつくる工程。木枠に原型と砂を詰め込む作業。

砂を詰めて固めた後は、原型を外し、その空洞に溶けた金属が流し込まれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂型に解けた金属を流し込む工程。同じことをやっても毎日違うから、職人の勘と経験が大事。溶けた真鍮は、まさに生き物なのだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間をおいて砂型から取り出すのですが、この時点では未だ真っ赤な状態。

これにショットブラストを掛け、鋳物に付いた砂を落とします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左から原型、連なる鋳物、それを切り分けたもの、さらに研磨を掛けて組み立てる(黄銅磨き、サテンクローム、黒)といった流れで製品が作られていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研磨の行程。荒い研磨剤から細かい研磨剤へと順に掛けて、何度も何度も丁寧に丁寧に磨き上げていきます。最も高度な技術が必要な工程なのだそうです。

 

一連の流れを見ていくと、鋳造を熟知した高い職人技術と経験が必要であることが分かります。それは何代にも渡って受け継がれてきたもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

磨き上がった製品。黄銅磨きという仕上げ。貴金属のような美しい輝き。

 

こちらの工場では砂型鋳物に拘っているとのこと。それは型費が金型に比べて安く済むため量産前の試作品や小ロットの生産に向いているから。またそれが基本であり、ものづくりの原点なのだそうです。

 

重要文化財における鍵や蝶番の復元事業への取り組みや、建築家やデザイナーから依頼によるオリジナルの金物にもチャレンジし、加工から組み立てまで一貫した製品づくりができる町工場なのです。

 

 

 

 

昨日お話した「引き寄せ締り」のサテンニッケル仕上げ。こちらの町工場で作られています。製造過程を見ていくと、真鍮金物の工芸品と呼ぶに相応しいことが理解できますね。現在工事中の現場では、こちらの黄銅磨きを18個使わせていただきます。

 

もちろん高価なもの。生産量が増えれば価格が下げられるという声があるかもしれませんが、製造過程やその精神を知ると、そういった発想が望ましいこととは思えなくなってきますね。価格が高いのではなく、価値が高いものなのです。

 

こちらの町工場のお話は、2年半くらい前に家づくり学校で行ったもの。

家づくり学校では、来期1年生の受講生募集が始まっています。詳しくは、コチラ≫