空間とは、、、 | 築紡|根來宏典

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2013年2月28日(木)

空間とは、、、

昨日、写真家・二川幸夫氏による『日本の民家』のお話をしましたが、上の写真は、その海外版。『木の民家 ヨーロッパ』という書籍です。企画・撮影は、同じく二川幸夫氏。本棚から引っ張り出して、見てみたら、文・鈴木恂ということも凄いことなのですが、驚いたのは、序文がC・ノルベルク・シュルツであること。いやー凄いキャストの本です。

 

建築家は、よく「空間」という言葉を発しますが、この定義を語れる人は、少ないかと思います。もちろん、個々には色んな思いはあるのでしょうが。。。私は、このシュルツが空間概念の確立を成し得た初めての人物と捉えております。シュルツを語るに当たって、まずはジークフリート・ギーディオン(建築理論家、1894-1968)から。建築を学んだ者なら誰もが知る『空間・時間・建築(1941)』という彼の大著。その中では、現代建築と都市環境の問題を取り扱い、空間概念の発展に大きな影響を与えました。しかし、彼の弟子であるシュルツ(1926-2000)は、ギーディオンの空間概念の定義は明確に言及されていないことを指摘し、著書『実存・空間・建築(1971)』において空間概念を、実存的空間と建築的空間に分けて説明しており、建築的空間を実存的空間の「具体化」と定義しております。シュルツの実存的空間は、ハイデッガー(哲学者、1889-1976)の実存哲学、さらにがピアジェ(発達心理学者、1896-1980)などの心理学に影響を受け、環境の「イメージ」と定義し、それまでの単なる3次元的な形態による空間論の限界を克服することにより、空間は建築論の中心的位置づけを獲得したのです。

 

建築家が「空間」を語るようになったのは、意外や意外、実は最近のお話。近代に入ってギーディオン、シュルツの登場によってなのです。最初の建築家と言われるのは、古代ローマのウィトルーウィウス(紀元前1世紀)。彼が著した『建築書』は、古典建築の聖典となっておりますが、空間に関する記載はありません。その後、中世(2世紀-15世紀)における「空間」は、神学的に解釈されたので、これはやむを得ない時代背景なのですが。。。この二人の前には、ブルネレスキ、アルベルティ、ロージェ、ラスキンといった面々もおりますが、話は難しくなりますので、この辺で終わりにします。

 

ウィトルーウィウスによる『建築書』については、コチラ≫
ギーディオンによる『空間・時間・建築』については、コチラ≫
シュルツによる『実存・空間・建築』については、コチラ≫