大原三千院の参道奥に位置する『宝泉院』。建物は江戸中期頃に建てられたものと考えられているそうです。正式な玄関は別にあるのですが、参拝用の玄関は脇道に沿ったアプローチで趣を感じます。池泉「鶴亀蓬莱庭園」に面した廊下の天井は吹抜けになっていて、頭上には駕籠が吊られています。骨組みは漆、側は網代で、江戸時代中期のものだそうです。廊下と客殿とを繋ぐ鞘の間におけるシーンの変化が美しい。客殿から見る景色は柱や鴨居を額縁に見立てたパノラマで、南側は樹齢700年の五葉松を鑑賞することができます。西側には書院を設え、モミジや竹林の隙間を通して借景としての山々を望むことができます。水琴窟に耳を傾けると、水瓶にしたたる水滴の音が共鳴しています。囲炉裏の間は独特な設え。砂紋を施した回遊式枯山水庭園「宝楽園」は2005年に作庭されたもので、配石にオリジナリティが溢れています。全体として建築的な見どころ満載でした。