ミセ土間 | 築紡|根來宏典

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2021年5月13日(木)

ミセ土間

Kyoto岡崎アトリエの『ミセ土間』。左手には先日お話しした『ミセの間』、正面には台所に抜ける引戸。本来の京町家では、玄関と台所、さらには裏庭まで土間でつながっていますね。土間のことをニワと呼び、通り抜けられるので『トオリニワ』。井戸や竈、流しなどが設けられた調理場は、家族の出入り口でもあり『ハシリ』とも呼ばれます。ミセ土間は端的にいうと玄関なのですが、この多義性が京町家らしい工夫であり、暮らしの文化となっています。台所は現代的な暮らしに則し、床を上げた板の間にリノベーションしているケースが多いですね。

 

土間と床との段差は高く、今でいうところのバリアフリーではありません。視点を変えれば、腰を掛けるのに丁度よい高さという考え方もありますね。玄関を入ってすぐの室を、お茶や数寄屋の世界では『寄付』と言いますね。靴を脱ぎ、身づくろいをする場。お客さまを出迎え、お見送りする場でもあります。畳の上に正座した時に、玄関に立つお客さまの目線より少し低くなる高さ関係です。台所の上り口には可愛らしい沓脱石を据え、ミセの間(寄付でもある)の上り口には枕木を敷いています。沓脱石の上り口のところには、床下通風のためのスリット。お洒落な設えでしょ。

 

右手には模型や本、築紡特選の素材サンプルなどを並べ、お客さんをお出迎え。築紡の小さなギャラリーでもあります。普段は、愛車『Tokyobike』が格納。東京を走るために作られた自転車なのですが、京都でも活躍。ご存じの通り、京都は自転車文化が発達しています。街のスケールが、自転車の行動範囲に適しているから。また急な坂道も少なく、狭い路地裏に入っていくにも小回りが利いて便利。自転車ライフが快適な街でもあります。