市松の和紙@つくばの曲り家 その5 | 築紡|根來宏典

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2020年3月9日(月)

市松の和紙@つくばの曲り家 その5

ガーン(工事中のこと)玄関の壁一面に張ろうとしていたタイルが完売。次回入荷予定なし。建主さんお気に入りだったのに。他のタイルを選び直そうとしたのですが、建主さん的にどれもピンと来ない。開口や下足入れの大きさ、スイッチの位置など、タイルの割付に合わせて決めてある。寸法が変則的なタイルだったので、その割付を重視すると、どのタイルを選んでも合わなくなる、、、いっそのこと、タイル以外の素材にしましょうか?と。いくつか考えられる候補の中で『和紙』を選択しました。

 

とはいえ玄関ですので、汚れにくいものの方が良いですよね、、、もちろん天然系で。提案したのは漆和紙、柿渋和紙、彩色和紙の3つ。漆和紙は、楮紙に漆を塗ったもので、漆独特の透明感があります。柿渋和紙は、楮紙に柿渋(柿油)をベースに松煙墨やベンガラを混ぜて塗ったもの。詫びた感じがします。彩色和紙は、楮紙に膠(ニカワ)をベースに顔料を混ぜて塗ったもの。ハイカラな感じがします。

 

いずれも一枚一枚に個性があり、セレクトが難しい素材。基材となる和紙は手漉き。そのテクスチュアと、漆、柿渋、膠の溶け込み加減によって見た目にバラつきがあります。それは塗った日や人によっても異なり、同じ色調に揃えたければ、同じロットを指定する必要があるのです。小さなカットサンプルを見ているのと、大判で見るのとでも、その印象は大きく異なります。それが自然素材の良さであり、楽しみ。これらの故郷は長野県は木曽。タイルの件は残念でしたが、それが転じて素敵な素材を使わせてもらうことになりました。どれも美しい風合い、一枚に絞り切れないとのことで、最終的には柿渋和紙(墨灰)と彩色和紙(薄紅)の二枚を市松貼りに。

 

照明スイッチは真鍮鋳物のトグルスイッチ。鋳物の街・富山県高岡よりお取り寄せ。ずっしりとした重み、使うたびに味わいが増す素材。手間が掛かるのでトグルの採用を嫌がる工務店さんは多いのですが、監督さんも電気屋さんも、嫌な顔せず取り付けてくれました。子供達も、カチカチ、カチカチとスイッチを上下しながら満足そう。