最後に訪れたのは、東京都昭島市にある『荒川木工所』さん。
いわゆる町場の建具屋さんなのですが、高い技術、知識、経験をお持ちです。
工場の中を一通り案内してもらった後、
工場の前に机を広げて、荒川さんによる青空教室。
限られた時間ですので、障子に的を絞って解説してくれました。
設計者の知識を、建具屋さんのレベルまで高める必要はないかもしれません。
ただ、あるレベルを知らないと、本物のデザインができませんし、
そのデザインを作ってくれる職人技術を知らずして、
本質的な実務は成り立たないと思える講義でありました。
家づくりの会の木製防火建具研究会と一緒に開発した防火建具のモックアップ。
防火性能を求められる地域においては、基本的に木製建具は使えません。
一部のメーカーでは防火認定を取得した木製サッシも生産していますが、
それらはそのメーカーでしか作ることはできませんし、意匠的にも悩ましいところ。
こちらで目指しているのは「町場の建具屋さんでも製作できる木製防火建具」であり、技術のオープン化という思いから始まった取り組みです。
しかも建築家の建具らしく框が細い、隠し框、透明ガラスと拘りが詰まった美しさ。
木の素材も選べますし、モックアップなので小さなサイズですが、
最大w2.85m×h2.40mで防火認定を取っています。
建具屋さんに足を運んだことのある設計者は少ないのではないでしょうか、、、
今の住宅で使われている殆どの建具は、既製の工業製品であり、町場の建具屋さんの出番は少なく、職人・後継者不足に悩まされ、技術が衰退しつつあります。
特注品と既製品、手加工と機械加工、伝統的なものと現代的なもの、
どちらが良いということではなく、
相互の良い所を活かすことの大切さ、その工夫を学んだ一日となりました。
荒川さんの工場は、いつ来ても綺麗。ゴミが出ると同時に掃除する職人さんの姿が見られます。塵取りも、職人さんによる手づくりでした。