土間空間と素材 @都市の隠れ家 その4 | 築紡|根來宏典

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2018年1月19日(金)

土間空間と素材 @都市の隠れ家 その4

玄関を入って左手には、その延長としての土間空間。ご主人の趣味は、日曜大工。土間は路地に面しており、掃き出し窓を開ければ、外部と一体的に使えます。小上がりの下には、長物の資材も入る大容量の床下収納。左手の豊かな緑は、お隣さんのお庭。借景として眺めさせてもらっています。

 

土間は、墨入りモルタルに石畳調の目地切。左官屋さんが丹精を込めた仕上げ。広さは4.5畳。突き当りの壁には、横井さんの手づくりタイル。根來事務所では、すっかり定番になった素材。今回はブルーグレイのタイルを縦に芋目地。2丁掛け(60mm)より少し幅の狭い45mm。墨入りモルタルの雰囲気とも相性が合っています。

 

構造材(柱・梁)は、宮崎県産の飫肥杉。梁というと一般的にはベイマツですが、杉も使えます。杉を梁に使うと「この設計者、木のことを全然わかってないんだよね~」と言われる方もいますが、、、ベイマツは粘り強さに優れているので合理的なのですが、強さが劣る材種はその強度に合わせてサイズを大きくすれば良いのです。サイズが大きくなると迫力があり、立派な材を使っているという印象にも繋がります。また飫肥杉は殺蟻成分を含んでおり、柱としては理想的な材でもあるのです。

 

素材の美しさや強度といった点では、他の産地の方が優れている面もありますが、乾燥やプレカットといった技術面で宮崎は進んでいます。我々設計者は、素材のことはもちろん、そういった技術のことも知らないと責任ある設計はできません。今回は飫肥杉を選定しましたが、それぞれ住宅の特徴に応じて産地を選ぶことが大切です。そのためには、知識だけでなく「顔の見える野菜」のように木の産地のネットワークを持つこと。山を育てる人、製材する人、加工する人、木材を流通させる人、家を建てる人、、、木の家を建てるためには、多くの人が関わっています。今回の住宅で一番大きな梁せいは490mm。集成材ではなく、無垢ですよ!490mmというのは、安易に使うことができるサイズではありません。国内最高レベルの乾燥技術をもつ工場から仕入れているからこそ、安心して使用できるサイズなのです。

 

フローリングもそれに合わせて飫肥杉。構造材と一緒にトラック1台で運ぶことにより、輸送の合理化を図っています。サイズは、なんと!厚さ30mm、幅220mm、長さ4m。厚さ30mmというのは驚くほどでもないのですが、幅は一般的には広くて180mm。これは凄いこと。乾燥技術の積み重ねが成しえる技。見た目の迫力はもちろん、しっかりした踏み心地と優しい肌触りが足裏で感じることができます。30mmもの厚板を使っているので、合板は敷かずにフローリングを大引の上に直敷き。仕上げには、桐の油を塗っています。時とともに味わい深い飴色になる素材、時間の経過が楽しみです。