路地に惹き込まれるように @都市の隠れ家 その1 | 築紡|根來宏典

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2018年1月15日(月)

路地に惹き込まれるように @都市の隠れ家 その1

東京都練馬区で手掛けた『都市の隠れ家』を紹介します。お引き渡しをして一年半、諸々の設えが暮らしに馴染んできたところを撮影させて戴きました。いつもお願いしている写真家・上田宏さんの撮影によるもの。これから数回に分けて、連載したいと思います。

 

用途地域:第1種低層住居専用地域
防火規制:準防火地域
敷地面積:130.75㎡(39.55坪)
延床面積:91.31㎡(27.62坪)
構造・規模:木造・2階建て

 

北側道路に面した敷地。玄関は左脇の奥に構え、路地に惹き込まれるような設え。そのまま南側のお庭に通り抜けることができます。間口が狭い敷地ながらも、人の歩く距離を長くすることにより、奥行きのあるアプローチを演出しようと考えました。

 

ファサードの開口部は、右上の縦格子部分のみ。縦格子の向こうは、坪庭になっています。格子の隙間からは緑が溢れ出し、生活の馴染んできた様子が垣間見えます。

 

窓の少ない様相ですが、内部は吹抜や中庭を内包し、明るく風通しの良い住宅。27坪とコンパクトな計画でありながら、多様性に富んだ空間構成となっております。良質な国産木材に拘り、大工・職人さん達の手づくりの痕跡が詰まった住宅です。

 

そんな住宅に似つかわしく、外壁は「焼杉」としています。愛媛県産の杉で、幅165mm、厚さ12mm。杉板の表面を焼いて炭化させることにより、耐久性を増しています。瀬戸内の海辺の住宅では、昔ながらに見られる工法です。準防火地域だからといって、外壁に木を使うことを諦めることはありません。可能です。

 

焼杉は、2種類を使い分けています。焼き放しのものと、掻き落としたもの。前者は炭が厚いぶん耐久性は高いのですが、手に炭が付きます。後者は手に炭が付きにくくするために掻き落とすのですが、そのぶん耐久性は下がります。それを補うため、黒い塗装を施しています。使い分けとして、基本的には焼き放しを使い、縁側や中庭や物干場といった人が手に触れやすいところには掻き落としを使っています。掻き落とし部の将来的な塗料の上塗りを想定し、足場が必要になる高い所は焼き放し、手の届く所は掻き落しになるように配慮しています。