江戸東京たてもの園には、30もの復元建造物が建っております。
中でも私のお気に入りは、1925年(大正14)に建てられた『田園調布の家(大川邸)』。
屋根は瓦、外壁はドイツ下見貼りの和洋折衷様式。当時としては珍しい全室洋室。
デザインが好みなわけではなく、惹かれるのはその暮らしやすさ。
居間を中心に、廊下を介さず、寝室や書斎が雁行して配置されております。
各室をズラすことによって生じる部屋の角に窓を設けることによって、
どの部屋も2面採光となり、外部の緑との関係も豊かになっています。
居間と食堂とは、引き分け戸を開け放てば一体に。
正面の食器棚の向こうは台所で、小窓を開ければLDKに一体感が生まれます。
食堂と台所も雁行しており、こちらの角もコーナー開口で、外部と一体感があります。
今ではLDKが一体となったオープンキッチンは普通のことですが、
当時の住宅の台所は、暗くて寒い、裏方的存在でしたね。
しかも食器棚は、両面硝子扉となっており、どちらからも出し入れできる便利さ。
小さな平屋の住宅なのですが、間取りの工夫と丁寧な作り込みによって、
豊かな暮らしが実現されています。