石の産地を訪れる その3 大谷石 | 築紡|根來宏典

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2016年6月17日(金)

石の産地を訪れる その3 大谷石


続いて『大谷石』。大谷石の採掘場は、地下掘りです。

大谷石というと、フランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテルで使用され、
一般の人にも聞き覚えのある石かと思います。

また大谷資料館(採掘場跡地)を訪れたことのある人は多いでしょうし、
近年では、コンサートや結婚式の場として利用されるなど、利用価値の高い場所ですね。
大谷石に反響する柔らかな音の響きは、なんとも言えない感動があります。

我々が訪れたのは、その資料館ではなく、現在、採掘している現場。
これは、とてもラッキーなことで、そうそう経験できることではありません。
大谷石の採掘現場に潜ったことのある設計者は、少ないことと思います。

入口は7×7mのコンクリートで固められた立坑。
細い足場をドンドン降りていくと、コンクリート擁壁と大谷石岩盤との結界ラインが。
この辺りから、一気に暗くなり、寒さと湿度が増します。

大谷石の岩盤からは、湧水が滴り、頭や洋服に水が落ちてきます。
木製の足場板は、ところどころ朽ちており、細心の注意が必要です。

あちこちに釜場をつくり、湧水を溜めて、地上にポンプアップされます。
ほんと凄い光景です。

降り立ったのは、地上から深さ50メートルの平場。
緊張しながら足場を下ってきたせいか、見上げると足が震えます。

平場の横方向には、巨大洞窟が広がっています。
これが大谷石が切り出された跡かと思うと、ますます足の震えが止まりません。

闇の中、わずかな光を頼りに、石を切り出す風景。
切り出される原石のサイズは、300×300×900mm。
今では、チェーンブロックで引き上げられますが、昔は人力で荷揚げしたそうです、、、

実は、この地下に潜るのは2回目。
その時は、まだ掘り起こしが始まったばかりの採掘場ということで、
地下空間のダイナミックさは感じなかったのですが、
あれから5年、物凄いスケールの地下空間が形成されていました。

大谷石の採掘場は、最盛期には40~50社あったそうですが、現在は10社程度。
大谷石を切り出す職人さんは高齢化し、今後は職人不足になると聞いていたのですが、
この地下採掘場には若い方が何人かいらっしゃいました。
大谷石の明るい兆しを感じ、なんだか嬉しくなりました。

根來宏典