特別公開講座 『建築設計者のアイデンティティとは何か』報告 | 築紡|根來宏典

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2015年8月25日(火)

特別公開講座 『建築設計者のアイデンティティとは何か』報告

8月22日(土)、NPO法人家づくりの会が主催している「家づくり学校」の特別公開講座がありました。特別講師は「建築家と建築士-法と住宅をめぐる百年」を著した速水清孝先生。書籍の紹介は、コチラ≫

 

事前に、その著書を読んでいたのですが、堅い文面ではなく、速水先生の人間味溢れる話し方によって、より深い理解と共感を得た次第です。もちろん著書に書かれていないお話や、それにまつわるお話を交えながら。先生は「講師を引き受けるのはいいですが、僕の話、人が集まりませんよ。地味ですから」と、、、確かに、想像していたよりも少ない参加者数ではありましたが、その反面、意識の高い聴講者が多かったように思います。

 

第二部のパネルディスカッションでは、山本誠一郎副校長名司会のもと、泉幸甫、半田雅俊、川口通正といったパネラーに、私も加えて頂き、熱い語り合いの場に。会場からの質疑も熱く、実務をしている参加者が多かったせいか、単なる歴史の振り返りではなく、現在の問題、未来への展望へと議論は広がりました。新国立競技場のこと、耐震偽装問題のこと、景観のこと、登録建築家制度のこと、専攻建築士制度のこと、第三者監理のこと、関係諸団体のこと、建築家のあり方のこと、、、

 

先生は、よく建築関係団体や行政に講演を頼まれるのですが「呼ばれて行って、怒られて帰ってくる」そうです、、、そりゃそうでしょう、建築関係団体の敗北を掘り起こしている訳ですから(笑)行政も、先輩から聞いている話や伝説といった自身の持っている知識とは異なるそうです。人それぞれの立場があるかと思いますが、歴史的事実を客観視せずして、現代の問題解決や、未来は切り開けませんよね。そういった意味でも、速水先生の業績の存在は大きい。

 

先生の「一握りの建築家が、ではなく、ごく普通の設計者や建築に携わる多くの人が、職業に誇りを持てる社会を」という言葉が、いまでも心に響いております。私自身もこれまで、建築士の資格は「足の裏についた米粒」くらいにしか思っていませんでした、、、しかしこの本を読み終えて、今ではこの資格を有していることに誇りを持っています。

 

その上で言うと、資格に甘んじてはいけないと思うのです。法は、自身を守ってくれるものでもなければ、縛られるものでもありません。法云々ではなく、個が自立することこそが、自由や社会的信頼を勝ち得ることに繋がり、その環が広がることが豊かな社会を形成していくと思います。建築家とは、そういった存在だと思うのです。

 

はぁ~、、、この本、もっと沢山の建築家、建築士の方に読んでもらいたいな~殆ど読んでる人はいないかと思います。なにせ地味な話なので(笑)この本を読む人が増えれば、この業界の未来は明るくなると思います。