石の採掘場だけでなく、その素材の建築的な使われ方も見てきました。
訪れたのは那須にある『二期倶楽部』。
特に1986年に完成した本館のオーベルジュは、見事な建築です。
設計者は、故・渡辺明氏。お会いすることは叶いませんでしたが、私の大学の先輩。
このような素敵な建物を設計できる先輩がいるということだけで嬉しい気持ちになります。
床には『芦野石』、壁には『大谷石』がふんだんに使われております。
芦野石と大谷石の目地割り取り合いも完璧です。
これは採掘する際の原石サイズが同じだから。
原石の切り出しサイズを知っていなければ、出来ない合理的な目地割りの術です。
内部も見学。石の厚みを活かしたコンセントや空調レタンの納まり意匠、
イサム・ノグチの照明との調和も美しい。
壁面の大谷石の表面に入っている斜めの筋は、
職人さんが一本一本、手で彫ったそうです。気の遠くなる作業ですね。
当時の職人さん達の熱意が伝わってき、今もなお、その魅力が際立っています。
浴室の床にも『芦野石』。
水に強くてコンクリートとの付着が良い『芦野石』ならではの使い方です。
こちらは、歩道と植木との境に設けられた土留め。芦野石です。
芦野石は苔が付きやすいのも特徴で、黒ずんだ芦野石と緑の苔との色バランスも絶妙です。
こちらは、トイレ休憩に立ち寄った『友愛の森』という「道の駅」。
これだけ大きな面積で芦野石を使った事例は、他では見ることができません。
当日は、あいにくの雨模様でしたが、自然の石は、雨に濡れた方が趣が出ますね。
大谷石の集落も見学。
こちらの集落では、どれ一つとして同じ大谷石の使われ方はしておりません。
住宅、蔵、塀など、、、どれも個性的で、趣深い魅力を発しております。
全体性としての建築群は、なお一層個性的で、素晴らしい魅力が残っている集落です。
建造時期、表面加工の仕方、部位、産地の違いによって、
経年変化の違いを読み取ることができ、たいへん勉強になります。
特に、こちらの集落が位置する徳次郎という地域で採れる大谷石を『徳次郎石』と呼び、
ミソが少ないという見栄えだけでなく、劣化が少なく、長きに渡って美しい保存状態が保てます。
こちらが、その徳次郎石で作られた蔵。本当に美しい。
以上で、『栃木の石』の紹介は、お終い。
次の授業は9月20日『建具』の見学となります。
月1回の授業ですが、見学に行く方も、受け入れる方も、
暑さに参ってしまうので、夏休みとしております。