建築家は何をする人 | 築紡|根來宏典

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2012年9月3日(月)

建築家は何をする人


先日、建築家が集まっての勉強会がありました。
テーマは「正しい設計監理委託契約のしかた」、講師は森岡茂夫さん。

私たち建築家は、設計依頼を受けると、当然、設計監理委託契約を結びます。
そのとき必要になるのが、契約書。
私たちが事務所を立ち上げ(独立して)、まず準備しないといけないのが、そのフォーマット。

考えられるのは、
①師匠フォーマット、②独自フォーマット、③四会連合協定フォーマット、④JIAフォーマット。

①は、最も多いパターンですね。
②も、よくあるパターンの様ですが、各自での工夫が大変のようです。

③は、日本建築家協会、日本建築学会、日本建築士事務所協会、建設業協会の4団体により
構成された協定のフォーマットで、第3者機関的な安心性、公平性があるようですが、
どちらかと言えば大規模建築を対象としており、住宅等の小規模向けではありません。
そもそも設計監理の話に、建設業(いわゆる建設会社)が絡んでいることに違和感があります。
設計監理と工事管理の区別(お互いの立場を尊重し合う)は、キチンとしないと。

④そこで登場したのが、2004年に日本建築家協会(JIA)より発行された
「住宅等の小規模向けの建築設計・監理業務委託契約書」。
私の独立年と同じで、この契約書を目にした時、真っ先に購入し、使っています。
住宅等の小規模向けで分かり易く、第3者機関的な安心性、公平性があるからです。

なんと、この契約書を作ったのが、今回の講師・森岡さん。
今回の勉強会は、この契約書の説明ではなく、それを取り巻くこと。
設計監理(建築家は何をする人)とは。そして、その責任に尽きます。

契約行為において、小さな字で法律用語が並んでいると、楽しくありませんね。
契約書というと保身のための書類のイメージですが、
自分たちの身を守ると同時に、建主さんの身を守るもの、
かつ社会を正常に導くものと感じました。

それが職能を守るということ。それがなければ、安心も公平も生まれません。
まだまだ日本においては、建築家の職能は確立されておりません。
どちらかと言うと、マイナス方向に進んでいる社会状況のようにも見えます
まだまだ築く段階、育てる段階です。日本の建築文化の未来のための勉強会でした。

それにしても、森岡さんの生き様は、素晴らしい。人間性も素晴らしい。
森岡さんも独立した建築家です。
それさておき、このフォーマットを作り上げ、かつ、このフォーマットの議論を戦わせております。
初めてお会いしたのですが、尊敬しました。
ちなみに後から知ったのですが、森岡さんと私とは同郷です。

私は、これからもこのフォーマットを使います。
加筆・訂正はしませんし、建主さんから求められても加筆・訂正しません。
そして普及させ、多くの建築家たちや施主さんと共により良い社会を目指したいと思います。
このブログ記事を沢山の建築家に読んでもらいたいものです。森岡さんに感謝。

根來宏典