三渓園の魅力は、古建築だけではありません。
それらを惹き立たせる庭の設えが素晴らしい。
上の写真は、『松風閣』手前の階段。私が一番美しいと思った階段です。
黒っぽい部分が柔らかい石。白っぽい部分がモルタル。
素材の摩耗性の違いが、豊かな表情を作り上げております。
こちらは、その石に苔が覆った状態の階段です。
続いて、『松風閣』と『旧燈明寺三重塔』を繋ぐ園路。
緩やかな勾配に沿って、段差が付いております。その納め方が巧妙。
写真手前に大きな石が埋まっております。
それを避けるように脚を進めると、
段差解消のためのマツ板の両端に束石が埋め込まれている。
さらに脚を進めると、モミジの木の足元を隠すように左手に大きな石が鎮座。
空を見上げると、見事なモミジが覆っているのです。
『寒霞橋』近くの水辺に降りる階段。
人が歩く部分が摩耗し、脚が掛からない入隅には黒玉石が埋め込まれております。
『旧燈明寺本堂』の無垢の段板。
『聴秋閣』奥の遊歩道(季節公開)。
庭園の露地や延段に使われる技法『霰零し(あられこぼし)』ですね。
この技法で有名なのが、桂離宮の御幸門前の苑路です。
真・行・草でいうと、「草」。ゴロタ石だけで構成される詫びた風情です。
根來宏典