稲田石 | 築紡|根來宏典

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2009年5月1日(金)

稲田石

茨城の銘石といえば『稲田石』。

 

建築素材として使われる石材として、花崗岩、安山岩、凝灰岩などがあります。
花崗岩は御影石とも呼ばれ、兵庫県御影地区の地名が、その名前の由来。
ここで紹介する稲田石も花崗岩です。
安山岩の代表格は『鉄平石』、凝灰岩の代表格は『大谷石』です。

 

茨城県笠間市稲田にある『友常石材』にお邪魔してきました。
採石から加工に至るまで一貫作業ができる石屋さんです。

 

 

 

 

採石現場の様子。岩肌面に300ピッチで縦にラインが入ってます。
採石には、黒色火薬とワイヤーソーの2種類があります。
ワイヤーソーの方がラクだが、値段は高いそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩肌に縦横に割れが入っている所は、当然売り物には使えない。
この割れと割れの隙間に嵌ったかのような石。これを『皮石』と呼びます。
これも板に加工出来ないので、一般的な流通としては出せません。
私から見れば、希少価値の高いお宝に思えるのですが、、、
庭石や沓脱ぎ石などに使うと、何と贅沢なことでしょう。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

山を切出した時、地表の方は品質が悪く、このようなゴロンとした石が。
『玉石』と呼ぶそうです。玉石というと砂利やゴロタ石を思い浮かべるのですが、、、庭石にするには、手頃なサイズですね。こちらも流通には出ません。
また採石の際に出るクズ石は、海の護岸などに活かされるようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石割体験を通して、石の目を学びます。
石には目(節理)があります。節理が分かり易いのは『鉄平石』。
その目に沿って、クサビを打ち込んで割ります。

このクサビを『セリ矢』と呼びます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石が割れた瞬間。セリヤ矢は、打込むと中で口が開く仕組み。

 

石の上面を『カサネ』、手前側面を『目』、小口面を『二番』というそうです。
どの面も見た目は違いなさそうですが、よ〜く見ると違いがあります。
目肌に対してカサネ肌は、尖っていて、光っていて、キレイ。
磨いてしまうと、違いは分からなくなるのですが、
割れ肌面をそのまま仕上げとして使う場合は、知っておくと良いですね。

 

 

 

 

 

 

石を切るワイヤーソウ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この粒粒、何だか分かりますか?そう、ダイヤモンドです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな切断機。

高さ1800、奥行き2900、厚さ20mm〜の大きな平板が切り出されます。
切り出し速度は、1㎝/h。エッそんなに掛かるんですか、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切断後の刃。
ガングソーのノコ刃は、多くて2回まで(刃がダメになる)しか使用できません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細かな切り出しは、丸鋸で。もちろん刃先にはダイヤモンドが。
埃が立つし、熱も持つので水を掛けながら。

御影石が高価なのが理解出来てきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石は、仕上げ方によって表情が変わります。
左上が本磨き、左下が水磨き、右上がジェットバーナー、右下がショットブラスト。
本磨きと水磨きはツルっとしていて、

ジェットバーナーとショットブラストはゆず肌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本磨きは高級で、墓石によく使われます。
本磨きは外部床に用いると滑るので注意。その時は水磨きを用いる。
値段は、本磨き≒ジェットバーナー>水磨き>ショットブラスト。

 

本磨きと水磨きの工程は、基本的に同じ。
#500〜800くらいで砥石研磨したものが水磨き、#2000+バフ仕上げが本磨き。
目の細かさは、石種や石屋さんによって異なる。
以前は、いわゆる砥石で磨いていたそうですが、

今はダイヤモンドの粉付きの砥石だそうです。

 

 

 

 

よーく見ると、こちらは#800番の研磨ですね。
ダイヤモンド付きとあって、値段も高いのだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、ショットブラストしている様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステンレス製の粒(グリットと言う)をぶつけて、表面を荒らした仕上げ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、ジェットバーナーする機械。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別に手加工のジェットバーナーの様子を見せていただきました。
角や細かな部分は、小さなバーナーで丁寧に仕上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな面は、大きなバーナーで。迫力があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらはビシャン。先の尖った物で、細かい点状の模様をつけた仕上げです。

 

さらには、割り肌、小叩き、ウォータージェット、サンドブラスト、、、
などの仕上げもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは『中野組石材工業』の『前山採石場』。
1段の層が3m程。層深さは50m程です。突如目の前に現れた巨大遺跡のような穴。
稲田石を含む花崗岩は、溶岩が冷えて固まった物。
『深成岩』と言われ、地下深くに広がっているそうです。

 

中野組石材工業は、稲田石の老舗。代表的な施工例としては、
日本橋、国会議事堂、第一生命ビル、日本銀行などが挙げられます。
これら歴史的建造物は、この採石場の稲田石が使われていると思うと興奮しますね。

 

 

 

 

 

切り出された稲田石を積み上げた洞窟。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ってみると静粛な空間が。
右手壁と屋根は積み上げたもので、左手壁は自然の状態を活かしたもの。
壁の下は1500m以上もの稲田石の層が続いているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、御影石を飛石に使ったアプローチの設計事例。群馬県前橋市で手掛けた『対岳荘』です。事例紹介は、コチラ≫

飛石の寸法を決めている様子。白御影の割肌。サンプルサイズは450角。京都の光悦寺のアプローチは300角。光悦寺のアプローチの紹介は、コチラ≫

450角を見た建主さんは、大きい方が迫力があって良いですねと。ただアプローチのワイドや周りに敷き詰める石との関係を考えると300角の方がマッチする。じゃあ、350角にしましょう。では、飛石と飛石との隙間は?1cmくらいかな。アプローチ全体の長さから割り付けると、飛石のサイズは360角が丁度良い!決定。