こちらは埼玉県、秩父の山。
奥の方に写っている山が『天目山』と言い、原生林が残っているそうです。
伐採現場をご案内頂いたのは、日本のキコリ100人にも選ばれている上林さん。
上林さんは「自分は学識がある訳では無いので、喋るのが下手だ」と言います。
しかし、人間の体に例えた説明など、話す内容が自然体で、納得・理解し易いです。
山の手入れ、日本の山のお話しを伺い、一本の杉を切り倒してくれることに。
ノコを入れる時の緊張感、そして木が倒れる瞬間は圧巻です。
玉切りの様子。倒した木を4m毎に切り分けます。
製材の規格サイズが3.64mなので、この長さに切って市場に持ち込むのです。
簡単そうに見えるのですが、危険を伴う作業。名人芸だそうです。
年輪を計っている様子。46歳です。
上林さん曰く、年輪を見れば、木の成長過程が分かるそうです。
隣に立っていた木が、いつ間伐されたか、石などがぶつかって、いつ傷がついたか、
枝打ちが、いつなされたかとか。
よく年輪を見れば、南がわかると言われますが、これには語弊があるようですよ。
太陽に透かすと、このような透明感。瑞々しい。
赤身と白太の意味や役割など、強度、腐り易さ、水の吸い上げなどを
伐採の現場にて、キコリさんの言葉を通して、リアルに学んできました。
木を外側から中に向かって、順番に切ってみると、中から節が出てきます。
外部から見て節がなくても、中にあるということは、
成長過程において、枝打ちがキチンとなされている証拠。
節を見て、その深さや、いつ頃に枝打ちがされたかを想像するのは楽しいですね。
近年は、森林を守ることを目的に「間伐」には国からの補助金が出されております。
これはこれで良いことなのですが、もう一歩突っ込むと、枝打ちが大切なのだとか。
残念なことに、このことへの理解が浸透しておらず、枝打ちには補助金が出ないとのこと。
枝打ちをキチンとしていないと、住宅に使える木には成長しませんので。
こちらは枝の部分。構造材用ではありませんが、使い道は沢山あるそう。
木は捨てるところがないとのこと。
キコリさんは山の恵みに感謝し、山を守っております。
車には、塩、酒、米を常備しているとか。
新しい場所の木を切る際は、四方祓をし、清めてから伐採に入るそうです。
こちらは秩父の製材屋『金子製材』さん。
素材生産者(キコリ・上林さん)から木材を受け取り、
それを製材・乾燥をして工務店に受け渡すのが金子さんです。
金子さんの所は、このようにコンピューターにより品質管理されております。
中でも含水率とヤング係数の管理は重要です。
含水率は、木材の内部に含まれる水分量。ヤング係数は、木材の強さを表す単位。
乾燥工程完了後、含水率とヤング係数を調べて表示することをグレーディングと言います。
金子さんの所では、全品グレーディングを行っております。
実は、この全品グレーディングを行っている製材屋さんは、殆どありません。
金子製材さんは、JASの認定を受けている先進的な製材屋さんなのです。
近年、木材が伐採されてから、家が完成するまでの時間が飛躍的に短くなっている。
これは林業機械やプレカットによるものですが、乾燥技術の発達が大きい。
木材の乾燥は殆ど乾燥機で行われるのですが、天然乾燥だと4寸角の材で2年は掛かります。
一般住宅を作るのに、そんなに待てませんし、経費も掛かってしまいますよね。
乾燥機を使うと、下の写真の様な細かな割れが生じ易くなります。
だからと言って強度が落ちる訳ではありません。
逆に割れ易いということは、強度が強い木材ということでもあるのです。
割れている部材は見えない個所に、割れのない部材は見える個所に。
適材適所で使うことが、日本の森林を守ることに繋がるかと思います。
梁材です。右上2段目の材ですが、角が皮つきで、欠けておりますよね。
強度の話をすると、この方が強いのだとか。木材は、赤身より白太の方が強度が強い。
つまり、木の周辺部(白太)が多く残っている方が強いという訳です。
このような皮つき材を、梁として使うと、個性的で美しいですね。
こちらは、飯能にある『岡部材木店』さん。飯能で採れる木材は、西川材と言われます。
江戸時代「西の川から筏で送られてくる良質な木材」であったことが名前の由縁。
秩父は構造強度が強い材であるのに対し、西川材は化粧材としての美しさが魅力。
先述の金子さんのところは、JAS規格によるグレーディングに重きを置いておりましたが、
岡部さんところは間逆で、天然乾燥や木材の個性を活かすことに重きを置いております。
どちらが良いと言うことではなく、目的によって各社の個性を活かせれば良いと思います。
岡部社長曰く、自分たちは時代と逆行している。楽しく仕事がしたいから。
事業拡大を目指さないこと。一時は20人程いた社員も現在は9人。
現在の方が、生産性、心意気、緊張感が高まり、品質向上にも繋がったそうです。
まずは、上の写真。ヘリコプターで釣り上げて搬出したという岡部社長自慢のお宝から。
メイン商品であるフローリングなどの板材。スギ、ヒノキ、クリ、、、沢山あります。
特にサワラ材の厚板フローリングは独自の製品だとか。
もちろん板材だけでなく、天然乾燥に拘った構造材もあります。
手前にあるのは今年10月から天然乾燥を始めたもの。
奥の黒ずんでいる梁材は自然乾燥2年もの。磨くと美しい木目が出てくるのでしょうね。
15~20%まで乾燥しているそうです。
原木を手で触れてみる。肌理、密度、温かみ、柔らかさが、材種ごとに異なるのが分かります。ここで触っているのがサワラ(椹)。
温かみがあって柔らかい材の代表はスギですが、サワラの方が格段上です!
サワラはこの辺りの特産だそうですが、植林していないので価値が高まっているそうです。
時間も遅くなり、暗くなってまいりました。
奥の倉庫では、お宝を木取り中。500年推定のネズコ(鼠子)だそうです。
岡部社長が「これ何の木だか分かる?」って聞かれるのですが、
見るの初めてゆえ分かるはずもなく・・・触って感動。
さてさて、その使い道は?こんな材が使われる家に住めるなんて羨ましいですね。
『木曽五木』というブランドの木があります。
ヒノキ、アスナロ、コウヤマキ、サワラ、ネズコ。
江戸時代に尾張藩より伐採が禁じられた木曽谷の木ですね。
こちらは、飯能市にある『木楽里』さん
林業家の井上さんから西川材の生産、製材、流通、設計、施工にまつわるお話を聞く様子。
木楽里は、西川材の杉やヒノキを材料とした木製品を自分で作ることができる工房。
井上さんは林業と同時に、木育に励んでおられます。子供に対しても、大人に対しても。
子供たちに、家にある木を調べてくるように宿題を出すと、
割り箸しかないお宅もあるそうです。特にマンション住まいだと。
木だと思っていたフローリングや家具が全てプリント物であったりとか、、、
木という素材に触れぬまま育っている子供も多いようです。
林業の活性化には、頭で理解するのではなく、
子供の頃から本物の木と触れ合うことから始めなければなりません。
木で出来た床タイル。
木楽里の隣に建っている興味そそる建築。明治26年に建てられたそうです。
1階は貯蔵場、2階は住居、3階は養蚕として使われていたそうです。
3方張り出しの木造建築は珍しい。