根來宏典建築研究所

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2009年5月1日(金)

鉄平石

産地としては、京都府の丹波鉄平石、徳島県の阿波鉄平石、埼玉県の武蔵鉄平石も挙げられますが、代表的なのは長野県の諏訪、佐久に広く分布する鉄平石です。

 

その中でも3つの産地があり、諏訪地区で採取されるものが「諏訪鉄平石」、
佐久と望月地区で採取されるものが「佐久鉄平石」と呼ばれます。

 

まず紹介するのは、諏訪の鉄平石。
現地で案内いただいたのは、藤森鉄平石の細田さんです。
ここ諏訪では、最盛期には10社以上の業者が採石していましたが、
今では輸入材や工業製品に押され、3社ほどに減っているそうです。
上の写真は、鉄平石の採石場。山肌に岩の節理(割れ目)が露出しております。

 

 

鉄平石は、岩石の節理に沿って層状に剥がれる特徴を持つ輝石安山岩です。
職人さんが、石を薄く割る技を披露してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

節理を見極める石職人さん。石の目によって、厚みが決まり、
その厚みによって、使われる用途も決まってくるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは「方形」の加工。サイズは30センチ角。
チェーンソーなどの機会は使わず、道具はノミとハンマーのみ。手作業です。
鉄平石が他の石と異なるのは、石を切り出すのではなく、割り出すこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて「小端」の加工。
塀や壁に小端を見せて積んでいく時に使われます。
重厚感、風格を醸し出す、使われ方ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石を割った状態では角が鋭角で、用途によっては危険なこともあります。
そんな用途には、ミキサーの中で転がし、角を取って「「荒ずり」に仕上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出荷を待つ鉄平石たち。
現地には、板状に割り出された石が、そこかしこに積まれています。
色味は、均一ではなく、濃緑色から淡赤色まで多様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄平石で葺かれた石屋根のモックアップ(実寸サンプル)もありました。

美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄平石の採石場をあとにし、我々一行が向かったのは、

鉄平石で屋根を葺かれた民家群。

 

現在も実際に住まわれている民家です。

民家群を練り歩きながら、感動の連続。
鉄平石の屋根は、耐火性、耐候性、耐重性、耐酸性が高いのだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

屋根材以外にも、庭の飛び石、側溝の蓋、漬物石、などなど、
古くから使われてきたそうです。

藤森鉄平石の細田さんから鉄平石の書籍「素を磨き、用を拓く」を戴きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄平石の使われたかの事例見学として、

茅野市にある『神長官守矢資料館』を訪れました。

 

1991年に竣工した建物で、設計・監理は藤森照信氏+内田祥士氏によるもの。
屋根に葺かれた鉄平石。外壁は、サワラの割板。
その変色具合が、屋根の鉄平石と絶妙にマッチ。

 

 

 

 

 

 

 

外構にも鉄平石が多用されています。

この鉄平石の大きさ、厚みは、ダイナミックです。

 

石というと硬くて冷たいイメージですが、
この石の上に座り込んでみると何とも言えない肌触りで、

とても優しい感じがしました。

 

 

 

 

 

 

 

水路の側溝の蓋にも鉄平石。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三和土に埋め込まれた鉄平石の沓脱石。品を感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ところ変わって、こちらは佐久の鉄平石。
佐久の方は、最盛期には5以上の業者が採掘していたが、現在は2社のみだそうです。

 

現地では、信州鉄平石の清水社長と清水若社長の両氏にお世話になりました。
原石に手で触れる貴重な機会。険しい崖地に立ち、緊張感溢れます。

 

 

 

 

 

 

 

 

若社長が鉄平石を割る様子を見せてくれ、

その特徴がより深く理解できました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この辺りは産地ということで、

鉄平石を鱗葺きした石屋根集落も残っておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菱形の鱗葺きではなく、こちらは丸い鱗葺きの屋根。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、清水社長のご自宅の玄関。

見事な鉄平石が敷かれておりました。
写真中央にいる方が、鉄平石一筋の石職人・清水社長です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐久で原石の勉強をし、向かった先は、

軽井沢にある『石の教会・内村鑑三記念堂』。

 

実際の建築への使われ方の勉強。
アプローチにかなりの量の鉄平石が積み上げられている事例です。

 

レーモンド設計の『聖パウロ教会』の外部鐘突き堂の壁にも

鉄平石が使われているらしく、見たかったのですが、時間が足りず、、、残念。

 

 

 

 

 

こちらは、佐久の原石山で採れた鉄平石を使った設計事例。
群馬県前橋市で手掛けた『対岳荘』です。
アプローチの飛石は360□の白御影石とし、その周りには鉄平石を敷き詰めました。

こちらの事例紹介は、コチラ≫

 

「鉄平石」の可能性を求めて
設計者としては、建築の仕上げを決める際、図面に素材の指定をするだけでなく、
その活かし方まで追求したいものです。
鉄平石は、そのような設計者の力量が試される素材であると考えます。
鉄平石が他の石と異なるのは、岩石を切り出すのではなく、割り出すこと。
そのため、形、大きさ、厚みという点において、同じものはない。
鉄平石を扱うに当たって、そこが難しい点です。
ゆえに職人さんの腕次第となりがちですが、そこに可能性を感じます。
現在の産業形態として、産出、加工、販売、施工が分業化され、
その全体性が見えづらくなっています。
設計者自らが産地を巡り、原石に触れ、職人さんの仕事を知り、
繋がりを持つことは、これらを統合する行為でもあります。
これからの設計者には、この統合力が求められるのではないでしょうか。
これこそが、ものづくりの原点だと考えます。