根來宏典建築研究所

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2019年2月18日(月)

末永く、堅牢で質感あるもの

場所は新橋、外堀通り沿いの角地建つビル。

 

1932年(昭和7年)竣工。設計は公保敏雄とその実兄・小林正紹の共同によるもの。小林正紹は大蔵省技師で、国会議事堂や明治神宮外苑の絵画館の設計にも関わった人物だそうです。1階はショールーム、2階と3階は事務室、4階は居住。最上階に住居を設けるのは、当時の高層化した商業建築に見出せる建築の構成。現在は貴重な国民的財産として、国の登録有形文化財として登録されています。

 

外壁は昭和初期に流行したスクラッチタイル(表面に引っ掻き溝を付けた無釉のタイル)、モダニズムの要素を取り入れた水平の連続窓が印象的。周囲は近代的な高いビルに囲まれていますが、当時は街のシンボルだったことと思います。

 

高級感ある店構え。さてさて、その中に入っているお店は何かと言いますと、ブティックでもなければ、呉服屋さんでもなく、、、堀商店という「錠」を中心の扱う建具金物屋さん。創業は1890年(明治23年)の老舗です。

 

創業当時は欧米の建具金物を輸入販売していたそうですが、大正はじめに自社による建具金物や船舶金物などの製造販売を始め、その地位を築いていったそうです。末永く使えること、堅牢なこと、質感ある重厚なデザインを一貫して守り続けている理念に共感します。

 

店構えの方も、そういった理念に同調し、重厚感ある設え。

足を踏み入れるのに、ドキドキ感とワクワク感が共存し、背筋がピンと伸びる思い。

 

 

美しく並べられた取手たち。宝石のように輝いてみえます。真鍮(黄銅)を素材とし、仕上げは黄銅磨き、ホワイトブロンズ、オールドブロンズ、フェロネリ(鍛鉄のような)といったアイテム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラスケースの中には、様々な錠や建具金物。おもちゃ箱をひっくり返したような様相。このゴチャゴチャ感が楽しい。一つ一つを手に取り、素材のずっしり感、カチッカチッというしっかりとした錠の開け閉め感を実感することができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

打合せスペースの様子。床にはチェッカータイル。テーブルや椅子、家具や建具なんかもアンティークな設え。時間を忘れてしまう空間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、訪れた目的はこちらの小ぶりなレバーハンドル。ハンドルの長さは、標準的なものだと120mmくらいなのですが、こちらは68.5mm。元々は船舶用に作られたハンドルです。船舶に使う金物というのは、最小限の寸法と、丈夫な強度が求められます。気になるのはその機能性ですね。実際に握ってみると。あら?!不思議。す~と吸い付くような握り心地。

 

長い間、廃盤になっていたハンドルで、マニアな建築家の声によって復刻されたもの。当初は100個限定ということでしたが、建築家の事務所を廻って(私の事務所にも来てくれました)ヒアリングを重ね、現在は通常販売となりました。カタログにはホワイトブロンズしか載っていませんが、真鍮(黄銅磨き)もあるんですよ。我が事務所の愛用として標準仕様にしようと思っています。

 

 

ウチの事務所の場合、基本は引戸なのでレバーハンドルの出番は少ないのですが、プランニング上、どうしても開き戸になってしまうことがあります。

特にトイレ。トイレ空間のスケールを考えると、通常のハンドルだと大き過ぎてバランスが悪い。

真鍮があるのも嬉しい。使い込むほどに色合いが生活に馴染んでくることに魅力を感じています。

トイレのハンドルひとつに、そこまでこだわらなくても、、、という方もいるかもしれませんが、

もっとも使用頻度の高いハンドルゆえ、その機能性と美しさにはこだわりたいと思っています。

 

さらにウチの場合、これに一手間くわえ、上品な設えにするんですが、、、建具屋さんには、え!?って顔されます(笑)