集合住宅を設計したいと思ったことは一度もなかった | 築紡|根來宏典

築紡

築紡

loader
ブログ
ブログ

2018年6月11日(月)

集合住宅を設計したいと思ったことは一度もなかった

先日、集合住宅のお勉強をする機会に恵まれました。

 

家づくり学校2年生の自主企画によるもの。見学させていただいたのは、泉先生設計によるapartmentシリーズ2棟。もちろん「関係者以外は立ち入り禁止」の建物なのですが、設計者自らが特別解説つきで案内してくれました。

 

まずは『apartment惣(2013年竣工)』。

 

 

 

 

 

 

泉先生のapartmentシリーズは、共用部分が豊かであり、中庭や池などがあること。またギャラリーやジム、カフェなどを併設していること。そして最も大きな特徴は、低層であること。

 

一般的な集合住宅ですと、利益最優先なため、容積率を目一杯使いますが、それはデベロッパー的発想。何故このような低層かつ豊かな共用部が実現できるかというと、それは思想を持った建築家主導で進め、その思想にオーナーが共感しているから。

 

低層であることは、街並みに貢献しますし、近隣への日照の影響が少ないのと同時に、共用部分に植えた植物にも良い環境となりますね。またエレベーターも必要ないので、そのイニシャル・ランニングコストも必要ありません。

 

 

こちらは2軒目『apartment鶉(2002年竣工)』。一般的な集合住宅ですと工業製品としての建材が使われがちですが、壁は左官、床には鉄平石といった経年美化する自然素材が多用されています。鉄平石については、コチラ≫

 

apartmentシリーズは、今やブランド。古いものはヴィンテージになっており、古くなるにつれて家賃が上がっているそうです。低層かつ容積率を抑えることは、工事費を抑えることになり、オーナーは借り入れ金額も抑えることができ、リスクも少なくなります。その上、空室も出ず、相場よりも高い家賃が得られるので、逆に採算が合うのと、返済が早く終わるのだそうす。

 

 

 

 

こちらの池は、ビオトーブになっており、水辺には草木が生い茂り、ホタルやトンボも生息しているそうです。泉先生は「村をつくる」と言います。多様な住戸バリエーションを整えることにより多様な住民が集まり、多様な植物を集め、多様な昆虫が集まってくる。そして多様な価値観を抱擁する近隣になっていくと。

 

正直いいますと、私自身、これまで集合住宅を設計したいと思ったことは一度もありません。それどころか、したくないと思っていました。私自身の思想に合う建物が、どうしても出来ないのが世の中のシステムだと思っていたからです。デザイナーズマンションと呼ばれる流行もありましたが、その様相とは異なるように思います。私自身もデザイナーズマンションに住んだことはあるのですが、作りも空間もチープでしたし、冬は寒く、1年目は我慢しましたが、更新せずに退去した経験もあります。

 

 

でも、このような集合住宅なら、是非やりたいと思います。夢が広がりました。

そして、どうすれば自分自身の思想に合う集合住宅の設計が出来るのか?というのを考えるキッカケになりました。

どうでしょう、皆さん、こんな集合住宅を街中に増やしてみませんか?

私自身、集合住宅を積極的にやろうとは思っていませんが、このような集合住宅が街中に増えると良いなと思っています。