手づくりタイル | 築紡|根來宏典

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2009年5月1日(金)

手づくりタイル


焼き物の街といえば、愛知県にある瀬戸、尾張旭。

日本で唯一、手づくりでタイルを焼いてくれる会社、横井さん兄弟を訪ねました。
ちなみに手づくりタイルは、こちらの会社の特許だそうです。
現場ごとにオリジナルなので、ショールームやカタログはありません。工業製品にはない、
手づくりの良さを伝えます。それにしても凄い、、、お二人のタイル”愛”。
目指すは「タイルやレンガではなく、焼いた壁」なのだとか。

といった理念的なことから、
赤土/白土、湿式/乾式、無釉/施釉、還元焼成/酸化焼成、、、
といった技術的なのことまで、色々と解説してもらいました。

訪れたのは土曜日。休業日なのですが、特別に作業の様子を見せてくれました。
タイルにラフで自然な表情を出すべく工程です。

タイルの土が採取される鉱山にも案内いただきました。今では危険で立ち入り禁止となっているのですが、横井さん兄弟は、小さいころ、鉱山の中を駆け回っていたのだとか。
閉山された鉱山は、工業団地などに整備されるそうです。

目地の仕上げ方について、少し横道を。
こちらは「ツラ目地」と言いまして、
最初に盛ったモルタルを掻き落としたままの状態です。

こちらは「シノギ目地」の施工の様子。専門のタイル屋さんでも御存知ない技法。
埃がたまらないように目地のモルタルを斜めに掻き落としたもの。もちろん手間と腕が必要な技法です。横目地の陰影が強調され、とても良い感じに仕上がります。

もう一つ「ササラバキ目地」と言いまして、
目地を刷毛引きし、少し目地面を引っ込めたもの。

実際に横井さんたちが貼ったタイルの事例を2件ほど見せてもらいました。
まずは地元銀行の壁。グレイの「一丁掛け」。目地は「シノギ目地」。

代表的なタイルのサイズに「二丁掛け」というのがあります。
30mm巾を基にして、227×60mmを二丁掛け、227×90mmmmを三丁掛け、
227×120mmを四丁掛けと呼ばれます。
上の写真は、二丁掛けの半分なので「一丁掛け」となるのですが、
そもそもこのサイズは特寸であり、一丁掛けという呼称はないようです。

もう一件は住宅。茶色の「二丁掛け」。目地は「ツラ目地」。
これ以上公開できないのは残念ですが、素晴らしすぎる住宅です。雨に濡れたタイルに風情を感じながら外観を拝見していたところ、たまたま、お住まいの奥さまが帰宅。「良かったら上がって、中も見て行って下さい」と。ラッキー!気さくな奥さまと雨に感謝。
設計者のこと、住み心地のこと、、、色々とお話し下さいました。

自然の素材を使って、手づくりで作るのですから、タイル一枚一枚に個性が出ます。
均一ではありません。その不揃いさにクレームを付けられては困るので、
信頼関係のある人の仕事しか受けないそうです。

タイルを貼る技術も要するため、材工一体でないと受けないタイル屋さん。といいますか、
タイルは素材そのものも奥深いのですが、目地が肝心。意匠に大きく影響を与えます。
つまり良い素材のタイルを選ぶのと同時に、目地を詰める良い職人さんがいないと、
素材の良さが惹き出せないのです。
冒頭で仰った「焼いた壁」という意味が、やっと分かったような気がします。

横井さんのタイルを、和田さんに貼ってもらった設計事例。
東京都目黒区で手掛けた『祐天寺の家』。壁だけでなく、床もです。
自然の土から、この白を導き出すのに、長年の研究を重ねたそうです。

根來宏典